今週にお送りする歌は、台湾を拠点にアジアで活躍している、マレーシアの女性歌手、フィッシュ・リョンによる、「不想睡」(眠りたくない)です。この歌は、1993年、日本の四人組ロックバンド「THE BOOM」が発表したヒット・ソング「島唄」のカバー曲です。
原曲の島唄は、戦争のもとで愛する人達と永遠の別れを告げています。沖縄戦とその犠牲者への思いを歌っている鎮魂歌として知られています。日本だけではなく、台湾でもよく日本料理店などで流されますので、この歌を耳にすることは少なくありませんが、奄美三味線による伴奏と、ボーカルの真っ直ぐに伸びる透き通った歌声だからでしょうか。「島唄」は、よく「南国の景色を描く、夏っぽい歌」と思われがちです。実は悲しい物語が潜めていることを知る人は、限られているでしょう。
フィッシュ・リョンによるカバー曲「眠りたくない」は、戦争とは関係がなく、純粋なラブソングです。咲いては散る花火に冷たい梅酒、この真夏の景色の中で、ほろ酔いの主人公が、冬の雪夜に抱きしめてくれた、愛する人を偲びます。その人はどうなったのかははっきり書かれていませんが、原曲のように、すでに亡くなったというニューアンスがあります。
(編集:曾輿婷/王淑卿)