
偽情報と認知戦は世界各国のメディアが直面している問題になっています。台湾国際放送の運営母体である、中央放送局は先ごろ、タイのバンコクで「コロナ禍後のアジアの展望-全世界の偽情報と情報戦に対応」と題した国際フォーラムを開催し、大きな反響を呼びました。タイのメディア「Khaosod English」は特にこのファーラムについて報道しました。
「台湾人工智慧実験室(Taiwan AI Labs)」の創業者である、杜奕瑾(Ethan Tu)氏は、台湾は常にサイバー攻撃と偽情報の拡散の対象となっている。AIを使って分析すると、中国の政府系メディアがその中で果たしている役割が分かる。セントラルキッチンのように、ネット上の不審なアカウント、PTT、フェイスブックなどの内容を比較すると分かるように、中国の政府系メディアがあるニュースを発表すると、PTTとフェイスブックにおけるそれらのアカウントもそれに合わせて文章を発表する。中国の政府系メディアが食品の安全、補助金、期限切れの卵などを報道すると、それらの不審なカウントもすぐさま関連の情報を数千、数万発表する。全体を見ると、台湾の情報が操作される形跡が伺えると説明しました。
杜奕瑾氏は、中国語によるものとしては台湾のみならず、世界最大規模ともいわれるインターネット掲示板「PTT(批踢踢)」の創設者、初代站長(管理人)でもあります。
杜奕瑾氏によりますと、「台湾事実査核中心」というファクトチェックセンターのような組織だけに頼れば、偽情報拡散のスピードには追いつきません。このような偽情報の拡散は、台湾の農業部部長の引責辞任にもつながっています。
このようなことは、台湾のみならず、世界各国にも広がっています。杜奕瑾氏は世界各国の不審なアカウントを観察すると、そのうちの40%が米中関係を論じ、25%がロシアとウクライナ戦争の関連情報に触れていることに気が付きました。
杜奕瑾氏は、偽情報は一種の武器になって世論に影響を及ぼし、人心を揺さぶっていることを人々に知らせるべきだ。中国の政府系メディアはまた、一部のメディア、ネット上のオピニオンリーダーに資金援助を行い、これらのルートを通じてネットユーザーを誤った方向に導いている。認知戦がすでに始まったとし、人々に対してSNSなどのプラットフォームからニュースをキャッチしないよう呼びかけています。なぜなら、SNSなどのプラットフォームは操作される可能性があるからです。
一方、台湾のNPO「台湾民主実験室(Doublethink Lab)」の呉銘軒・執行長(CEO)は、この実験室が2019年に設立されてから、中国がいかにして世界各地で情報関係の影響力を拡大しているか、誰がその影響を受けているか、いかにしてそれに対応できるかについて研究を行っていると、同実験室の業務について説明しています。
呉銘軒・執行長によりますと、不審なアカウントはよくフェイスブックの演算能力を利用して読者を誤った方向に導こうとしています。例えば、2019年、数人のウクライナの青年は、抗議活動に声援するため、香港に向かい、自撮りの写真をアップロードしました。当時、ロシアのある知名度の高くないメディアは、これらの青年はアメリカの資金援助を受けているナチスの党員だと報じました。当時、このニュースはあまり注目されませんでしたが、昨年、このニュースは再びネット上に上がり、中国のウェイボーで広がりました。このニュースを見た人はみなそれらの青年はナチスの党員だと誤解しました。ほかの例として、タイ人のアカウントらしきものは毎日、簡体字中国語で文章を発信しており、似たような情報を拡散していることが挙げられます。
呉銘軒・執行長は、彼らはすでに「小粉紅(ピンクちゃん。1990年代以降に生まれた、『未熟な共産主義者』であり、『まだ完全に赤く染まっていない』という意味)」を判断できるソフトを開発した。千以上のアカウントは、中国の政府系メディアのニュースを拡散している。アカウントが違っても同じリンクをシェしている。一日200以上の文章を書き込んだアカウントもある。この辺からもこれらのアカウントは、本当の人間が使用するアカウントではないことが分かる。お金に買収されたか、それともコントロールされたかが分からないと述べました。
呉銘軒・執行長は、しかし、誰がこんなにお金を出してこのようなことをやっているか、中国の政府系メディアの情報を発信する動機は?これは、誰の目にも明らかだろうとも語りました。
呉銘軒・執行長はさらに、同実験室は、アジアのほか、その他の地域の情報も研究している。その結果、この「悪の勢力」は、世論を利用して一部の人、または物事に対する支持率を操作していることが判明した。ロシア・ウクライナ戦争を例にとってみると、この「悪の勢力」は、偽情報の拡散によってウクライナに対する支持を下げようとしている。台湾に関することなら、タイでタイ語を使ってみんなに、台湾はアメリカのコマに過ぎず、台湾、または中国を支持せず、両方と同じような距離を保ち、中立性を保てばいいと説得しようとすると、具体的な例を挙げて説明しました。
そのため、呉銘軒・執行長は地域内の研究機関、またはメディアは交流と協力関係を強化して、共にこのような地域における情報戦に対抗すべきだ。タイも中国の情報戦の大きな影響を受けている国の一つだ。これからより深く、より広い協力関係を築きたいと表明しました。