
5月に新型コロナの域内感染が広がり、現在、防疫警戒レベルを上から2番目の3級とし、市民も多くが外出を控えるなど、自主ロックダウン状態にある台湾ですが、6月4日に日本から無償提供されたワクチンが届いたことや、すでに契約していたアメリカの製薬会社モデルナのワクチンなど、台湾でも新型コロナウイルスワクチンの接種がいよいよ本格化してきました。
そんな日本から提供されたワクチン124万回分の接種が6月15日から始まったのですが、そのニュースの中で聞き慣れない言葉を耳にしました。
それは、高雄市と台中市が「yu3mei3ding1shi4」を採用して接種を行うというもの。
「yu3mei3ding1shi4」ってなんだろう?と、ニュースを見ていると、字幕には「宇美町式」という表記が。なんだか日本の地名みたいだなと思って調べてみると、その通り!“福岡県の「宇美町」で行われた独自の接種方法”という意味だったんです。
どのような接種方法かというと、従来の接種方法と言えば、まずは並んで、順番が来たら移動して、問診を受けて、ワクチンを接種して、待機室に移動…という流れでしたが、この「宇美町式」では、接種者は動かず、医師と看護師が巡回して接種を行うというもの。
ソーシャルディスタンスを保った椅子に座って待っていると、医師と看護師がやってきて、問診をしてワクチンを打つと、医師は次の人のところへ…。接種した市民はその場でしばらく経過観察をします。移動する必要はありません。
接種を担当した宇美町の医師によると、「時間にばらつきがあるのは、移動距離だったり立ち座りなので、1回しかたち座りしなくていいようにするにはどうするかというのを考えるとこのやり方がいいとなった」んだそうです。
この方法が台湾で紹介されると、ネットでも「賢い!」、「確かに移動時間は無駄だね」というコメントがあったほか、この「宇美町式」接種が生活の中で身近に感じられる「回転ずしの概念だ」というコメントや、「車の組み立てラインの概念ではないか」、「日本人は組み立てラインの手順に本当に長けている」という面白いコメントも上がっていました。
特に高齢者は移動だけでも大変だったりする方も多いので、医師の方が移動する「宇美町式」はとても効率的な方法ですよね。
実際にこの「宇美町式」は、高雄市、台中市だけでなく、桃園市や離島の金門、そして台北市や宜蘭県、雲林の一部の病院などでも採用するところが増えています。
この「宇美町式」を採用した初日、台中市では1時間で120人の接種が完了。台北市の新光醫院でもわずか30分で150人の接種が完了したそうです。
台湾では普段から日本の動きもよく観察していますが、このように参考になるものをお互いに取り入れ合えるといいですね。
ちなみに、実はこの「宇美町式」接種方法、福岡のメディアでは「高速大名行列式」という名前でで紹介されていたそうなんですが、台湾でも採用しよう!となったときに、この方式を始めた「宇美町」の名前をとって台湾では「宇美町式」と呼ばれているため、今では台湾の人たちに「宇美町式」の中国語読み「yu3mei3ding1shi4」というと通じるんですよ。
これがきっかけで、「宇美町」という町も台湾の人たちの中に広く知られるようになるかもしれませんね。
(編集:中野理絵/王淑卿)