
日本では晩婚、非婚、そしてそれに伴う、少子高齢化が課題となっており、総務省の最新の統計によりますと、総人口に占める高齢者、65歳以上の人の割合を示す高齢化率は、世界最高の28.4%となっています。
日本に比べると経済発展、社会構造の変化が遅かった中華民国台湾、現在の高齢化率は16%ですが、近年、晩婚、非婚により婚姻数、出産数は低迷、総人口はついに今年から減少を始め、予想よりも早く、5年後の2025年にも高齢化率は20%を越えるとみられています。ちなみに、今後、台湾の高齢化は、かつての日本よりも早いペースで進んでいくとみられています。
内政部の最新の統計によりますと、今年7月、台湾の出生数は1万2614人と、昨年同月に比べて2割近く少なくなりました。その一方、7月の死亡数は1万4533人でした。この死亡数も昨年同月比で8%マイナスではありましたが、出生数と死亡数を比較しますと、死亡数が1919人上回りました。また1月から7月の7ヶ月の累計も、出生数が9万2374人だった一方、死亡数は10万3088人と、死亡数が出生数を1万人以上上回りました。
台湾の昨年の出生数は17万7700人と、世界金融危機後の2010年の16万6000人に次ぐ史上2番目の少なさでしたが、今年の年間出生数は17万人を割り込み、昨年を下回る可能性が出ています。
台湾では死亡数が出生数を上回っている上、移民の流出入でもマイナスとなっています。こうした事も、高齢化加速の要因となっており、国力の維持の為にも少子高齢化の緩和、解決は喫緊の課題となっています。
日本でも、人口減少、高齢化の問題は地方でより深刻化していますが、台湾でもそれは同様です。台湾を代表する農業県、中南部の嘉義県では、少子高齢化に加え、就業機会の少なさにより、働き盛りの人たちの他の県市への転出が止まらず、高齢者の割合は全国トップとなっています。
嘉義県の人口は2010年末の時点では54万3248人でしたが、昨年、2019年末の時点で50万3133人とおよそ4万人減少しました。この7末の時点では50万897人となっており、毎月平均300人あまり減少していくと考えますと、10月の末には50万の大台を割り込むと予想されます。
嘉義県には市、郷、鎮などの自治体が全部で18ありますが、このうち人口が唯一成長しているのが太保市です。太保市には台湾の新幹線、台湾高速鉄道の嘉義駅のほか、国立故宮博物院の南院、長庚記念病院の嘉義分院もあります。近年は、ミニトマト、マスクメロンなど、温室栽培の果物のブランド価値が向上、若い世代の農業生産のUターン、Iターンも生んでいます。太保市の黄栄利・市長は、出産子育てへの補助や、居住環境の改善などの政策により、人々の定住を促しています。そして、現在、大手建設会社が、高速鉄道の嘉義駅付近に集合住宅を建設しています。
地方においてもやはり居住環境のいい中心部に人が集まってくるという状況なんですね。こうした中、嘉義県の翁章梁(おう・しょうりょう)県長は、工業エリアの開発推進、農工業の発展と共に、観光産業のモデルチェンジをより加速させていくと述べました。
少子高齢化の影響を受けているのは地方だけではありません。台北市の私立の高校や専門高校も少子化により、大きな影響を受けているんです。台北市教育局の統計によりますと、こうした台北市の私立の高校、専門高校は少子化により生徒募集が困難となり、一部の専門高校ではひとクラスの人数が10人に満たない状況となっています。この3年間で3校が募集を停止、廃校に追い込まれました。
こうした中、台北市の私立の高校や専門高校31校のうち、およそ6割の18校が中学部を開設、中高一貫校となりました。また、標準中国語に加え、英語でも授業を行うことで、差別化を図ろうとする学校も増えています。
70年以上の歴史をもつ私立、育達高級職業家事職業学校は、今年6月、新たに小学校、中学校を増設、「プリンストン高級中学」に生まれ変わりました。同校の劉育仨・校長は、同校は既に職業教育についてはしっかりとした基礎があるとした上で、台湾において、中高一貫教育にはさらなる発展の余地があると強調、グローバルな時代において、二言語教育は最もベーシックであることから、学校も変わっていかなければならない、と述べました。
また、少子高齢化により、台湾の人々の世帯の形、そして住宅事情にも変化がみられています。今後は、二世帯住宅と一人暮らし向けの住宅増加、そして大都市集中が顕著となるそうです。
台湾の世帯は、一組の夫婦とその子供などが同居している、いわゆる核家族が中心ですが、この10年、その世帯の規模は少しずつ縮小、近年、一組の夫婦のみ、片親と子供、祖父ないし祖母とその孫の世帯など、いざ、サポートや介護が必要となった際に、人の手が足りない世帯が大幅に増えてきました。
伝統的な大家族、三世代同居という世帯は減少した一方で、この5年、台湾では、二世代同居の世帯が増加しつつあります。専門家によりますと、最近の高齢者世代は介護施設へ入ることへ抵抗感があり、家で暮らしたいという希望をもっている上、以前とは異なり、プライバシー重視する考えを理解するようになってきているとして、若い世代が上の世代の面倒をみることもできる、こうした二世代同居が、ベストな世帯の形であると指摘しています。
ただ、世界と同様、台湾でも一人暮らしの世帯の割合は増えています。こうした中、一人暮らし向け住宅のニーズは今度、さらに高まると予測されおり、今後の都市計画、コミュニティづくりの際には、その点について注意すべきだとしています。
そして、ますます人口が大都市に集中していく中、インフラ整備や大規模災害への準備、対策がハードルとなる一方、人口減により、全体のニーズは減っていくとして、やみくもに都市計画を郊外へ広げていくのではなく、都市部の居住環境の向上を目指していくべきだ、としています。
日本と台湾、家族関係や社会構造に違いはありますが、少子高齢化、人口減がもたらす問題は似通ったものが非常に多くあります。課題の解決、緩和の為に、互いの経験を分かち合い、活かしていってほしいと思います。
(編集:駒田英/王淑卿)