「92年コンセンサス」、与野党で議論が沸騰

  • 29 June, 2020
  • 早田健文
台湾と中国大陸が「92年コンセンサス」は、「1つの中国、各自解釈」の基礎に立ち戻るよう呼びかける馬英九・前総統。(写真:CNA)

最大野党・国民党内、および与党・民進党と国民党の間で、「92年コンセンサス」を巡って議論が沸騰しています。国民党では、今年1月の総統選挙敗北後に新しく選出された江啓臣・主席の下で、国民党改革委員会が設置され、党としての対中国大陸の新しい政策説明の執筆に当たっています。この内容が、これまで党の対中国大陸政策の根幹とされてきた「92年コンセンサス」の意義を軽視するものになっているとして、党内のベテラン政治家を中心に不満が広がっています。

「92年コンセンサス」は、台湾と中国大陸の窓口機関が香港で会議を開催した際に合意したとされる「1つの中国」に関するコンセンサスです。その後の国民党の馬英九政権時代、「92年コンセンサス」は双方の交流の基礎となり、中国大陸との関係改善が大きく進展し、交流が盛んになりました。

ただし、国民党はこの「92年コンセンサス」は、「1つの中国、各自解釈」だと主張しており、「1つの中国」は認めるが、国民党にとってその「1つの中国」は中華民国であり、中国大陸側がこれをどのように解釈するのかには関与しないと説明しています。

これに対して、現在の民進党の蔡英文政権は、この「92年コンセンサス」を認めておらず、このため中国大陸側は蔡英文政権との交流をストップし、台湾と中国大陸の政治的な接触ができない状況が続いています。

しかし、国民党の内部では、2016年と2020年の2回の総統選挙に敗北したのは、この「92年コンセンサス」が台湾で受け入れられなくなっていることが原因の一つではないかとの論議があり、このため国民党として対中国大陸政策を改めて策定しようとしています。

こうした中で、馬英九・前総統は、台湾と中国大陸が「92年コンセンサス」、「1つの中国、各自解釈」の基礎に立ち戻るよう呼びかけてすます。これに対して、総統府は、「歴史はすでに新しいページに入った。国民は『1国2制度』を拒否しており、世界に向かう歩みを早めることを期待している」と批判し、「92年コンセンサス」と中国大陸が主張している「1国2制度」は同じだとの解釈を示しています。

この総統府の批判に対して、馬英九・前総統は事務所を通じてコメントを発表し、「蔡英文政権は馬英九・前総統の対中国大陸政策の主張を時代遅れだと批判しているが、『92年コンセンサス』による時代遅れの成果を放棄しようとしない。これはダブルスタンダードではないのか」と反論しました。

馬英九・前総統の事務所は、「馬英九政権の8年間、『92年コンセンサス』の基礎の下に台湾と中国大陸は23項目の協定に調印し、双方の間に平和と繁栄がもたらされた。これらの協定は、現在も有効に運用されている。蔡英文総統はかつて、こうした協定の一つであるECFA(両岸経済協議)について、『台湾を中国に飲み込ませるものだ』『糖衣をまとった毒薬だ』『国辱の不平等条約だ』などと批判したたことがある。しかしこれまで、政権獲得から4年になるにもかかわらず、『92年コンセンサス』に基づいて調印されたECFAを自主的に停止しようとしてはいない」と指摘しました。

これに対して、与党・民進党のスポークスマンは、「アメリカと中国大陸の貿易摩擦、香港への中国大陸当局の介入など、台湾の周辺地域・国家の情勢は非常に大きく変化している。民進党としては、馬英九・前総統は開放的な気持ちで、台湾の新しい民意を受け入れるべきだ」と呼びかけました。

「92年コンセンサス」と新しい対中国大陸政策の策定を巡って、党内のベテラン政治家から不満が出ていることについて、国民党の江啓臣・主席は、改革委員会から対中国大陸政策の原案が示されたのを受けて、討論が盛んに行われていることを見ると、改革委員会の第一歩は成功したとコメントし、今後、議論を進める考えを示しました。

江啓臣・主席は、「現在、党内には大きく分けて2つの異なる主張がある。一つは、『92年コンセンサス』は中国大陸との対話を維持し、台湾の安全、繁栄にとって極めて重要であり、現在のところ代替案はなく、放棄すべきではないというものだ。もう一つは、台湾と中国大陸の自由・民主を追求することこそが国民党にとっての核心的な価値であり、国民党の対中国大陸政策は『92年コンセンサス』だけにとどまるべきではなく、より多くの可能性をもとめるべきだというものだ」と指摘し、「いずれの主張にも道理が通っており、互いにぶつかるものではない。国民党としてはいずれも欠かすことはできない。先輩たちがいなければ、中国大陸との交流は切り開けなかった、若い世代がいなければ、それを継承することはできない」と語りました。

国民党は、新しい対中国大陸政策について、7月5日から台湾各地で説明会を開催し、9月に開催する党大会までに、異なる意見を戦わせて最終的にまとめたい考えです。

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