
イギリスの経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は先ごろ、カメルーン船籍の貨物船「Shunxing39」が台湾北部‧新北市野柳の北東海域で台湾の海底ケーブルを損傷させたと報じました。この件について、アメリカ・ペンシルベニア大学の主任研究員で、アメリカ国務院の元ヨーロッパエネルギー安全保障顧問のベンジャミン・L・シュミット(Benjamin L. Schmitt)氏は8日、Rti台湾国際放送の運営母体である中央放送局のインタビューに対し、この貨物船は故意に海底ケーブルを破損させたのではないかと疑うのが妥当であり、アメリカのドナルド・トランプ(Donald Trump)氏の大統領就任を控え、中国が台湾に対し政治的な圧力をかける手段の一つである可能性も排除できないと語りました。
先の「フィナンシャル・タイムズ」の報道によりますと、カメルーン国旗を掲げた貨物船「Shunxing39」が、台湾北部・野柳の外海でいかりを引っ掛ける方法で国際海底ケーブルを切断しました。当時、海の状況は悪かったことから乗船検査をすることはできず、当該船は数日内に韓国の釜山に到着するとみられており、政府は韓国に調査の協力を要請しています。
なお報道では、この貨物船は香港に登録された会社に属しており、この会社の登記管理者は中国人であると指摘しています。
世界各地の国際海底ケーブルの切断事件は頻繁に発生しており、類似の事件がアジア、ヨーロッパでも発生しています。
この件についてアメリカ・ペンシルベニア大学のベンジャミン・L・シュミット(Benjamin L. Schmitt)氏は、Rtiのインタビューの際、切断されたケーブルは台湾北部から、インド太平洋地区、そしてアメリカ西海岸まで伸びており、これは戦略的価値のあるケーブルである。ただたった1本切断されただけでは通信全体に損傷を与えることはできない。しかしこの行為はメッセージを発していると述べ、シュミット氏は、様々な理由から判断するに、この行為は意図的な行為(deliverer act)であると考えていると語りました。
シュミット氏は、このようなグレーゾーン地帯の行為は、衝突の前兆(run-up to a conflict)ともいえると話しています。
シュミット氏はまた、「Shunxing 39」は船舶自動識別装置(AIS)の名称も不明確なため、追跡が容易ではない。これも通常、グレーゾーン攻撃の一つの手口であると説明。そして、「Shunxing 39」はカメルーンの国旗を掲げているが、アフリカ諸国が台湾の海底ケーブルインフラに興味を持つとは考えられないと指摘。貨物船の登記会社は中国籍の人物の所有であることから、台湾に圧力をかけたいという中国の意図と関連している可能性が高いとの見方を示しました。
そして、バルト海の海底ケーブルについても同様の事態が発生しており、EUはロシアの影の艦隊が関連しているのではないかと疑っています。シュミット氏は、これも中国とロシアが西側諸国に対して圧力を強めていることを反映していると述べました。
シュミット氏は、「このようなグレーゾーンでの嫌がらせが増加傾向にあるのは、アメリカが台湾やウクライナを含む民主主義同盟への支援を弱めるようメッセージを送っていると思われる。海底ケーブルのインフラを破壊することは、ハイブリッド戦略の戦術の一つであり、アメリカは民主的なパートナーを支援し続けるべきである」と述べました。
シュミット氏はまた、海洋範囲はとても広いため、海上での対応能力の脆弱性を相対的に浮き彫りにしている。中国はグレーゾーンでの嫌がらせを通じて台湾への圧力を強めており、台湾は深刻に受け止めなければならず、また台湾は、これらの不審船をより厳重に追跡するために、海上または商業方面の監視施設を強化する必要があると語り、台湾の政府は破損した海底ケーブルに即座に対応するため、官民のパートナーシップや、例えば日本や韓国など地域内の民主的パートナーとの協力を通じて、船舶や協力協定などを含む海底ケーブルを修理する能力を構築する必要があると提案。そして、台湾も海上パトロール部隊の装備を強化し、海上のあらゆる種類の船舶の動きを把握するために、海上監視能力の強化、或は商業衛星の数を増やすべきであると述べました。
(編集:中野理絵/許芳瑋/本村大資)