好きな人に思いを伝えるとき、皆様はどんなことをしますか?おそらくオーソドックスなやり方は、ラブレターを送ったり、プレゼントやお菓子を贈ったりすることでしょう。
ところで、はるか昔から台湾で暮らしている先住民族・原住民族は、言葉も文化も異なる分、意中の人にアプローチする方法にも、いろんな面白い習慣があります。
今週は、2022年現在、政府によって認められている原住民族16部族のうち、3つの部族で伝えられている、想い人に求愛する方法についてご紹介いたしましょう。
1.阿美族(アミ族):ショルダーバッグ
アミ族は台湾最大の原住民族です。主に台湾を南北に貫く山脈・中央山脈の東側にある平地、台湾東部の花蓮県、南東部の台東県、そして台湾の最南端、屏東県の恆春半島で暮らしています。また、アミ族は、女性優位社会で有名です。代々女性が家を受け継いでいき、財産の相続も女性しかできません。そのため、求愛も、だいたい女性からなのです。
アミ族の女性たちは、毎年の7月半ばから9月初旬までの間に行われるお祭り、豊か、年齢の年、お祭りと書く「豊年祭」を利用して、好きな人に思いを告げます。
「豊年祭」は、作物の豊作を祝い、これまで一年間守ってくれた先祖に感謝を伝える重要な年中行事です。開催期間は、集落によって3日から一週間かかりますが、その間には、決まって「恋人の夕べ」と呼ばれるイベントがあります。
この夜になりますと、部族の人々は男性と女性別で手をつなぎ、内側と外側という2重の輪を作って踊ります。気になる男性が目の前に回ってきたときを狙って、女性は男性に好意を伝えます。
そのときに使うものは、花でもチョコでもありません。「dofot(ドフット)」と呼ばれる、アミ族の男性も女性も斜めにかけているショルダーバッグです。男性のバッグは、主にその母親、または恋人が作ってくれた物です。集落や家族によって、デザインや紋様も異なります。
女性が好意を示すときは、目当ての男性のショルダーバッグを軽く引っ張ります。もし男性もその女性に気がありましたら、男性は斜めがけしているバッグを垂直掛けにして、次にまた女性の前に回ってきたら、女性にバッグを取らせます。また、ある集落は、意中の人の「ドフット」に、原住民族が普段から食べている植物の実、ビンロウの実を入れる方法もあるそうです。
2.排灣族(パイワン族):薪
パイワン族は、主に台湾を南北に貫く中央山脈の南側、台湾最南端の屏東県と、台湾の南東部、台東県と台東市で暮らしている民族です。階級制度があり、貴族社会であることで知られている部族です。
パイワン族は、毎年の7月と8月頃、主食である粟を収穫した後、粟の収穫祭を行います。忙しい仕事がひとまず息をつく暇ができ、家計も潤沢になりますので、この夏休みの間は、パイワン族の人々にとって、想い人にアプローチする絶好のタイミングです。
アミ族と違って、パイワン族は男性優位社会ですから、思いを伝える側も、男性からがメインです。まだ科学技術が進歩していなかった昔、火をおこすことのできる薪が貴重な資材とされていました。そのため、パイワン族の男性が意中の女性に好意を示すには、夜中に百本の薪を担いで、女性の家の前に置き去り、女性の家族の好感度を上げる方法が定番です。
薪を運ぶことを通して、男性は、自分には薪を百本とれるほど強い力があり、一人前の漢であることを証明することができます。また薪は、意中の女性に対する燃え上がるほどの強烈な愛を示しています。
この習慣のため、同時に複数の男性から求愛されるパイワン族の女性の家の前には、薪が山積みになります。一方、女性に断られることを恐れる男性が、他の人に託して薪を送ってもらうこともしょっちゅうあるそうです。
時代の移り変わりに伴い、現代では薪を取ることが難しくなったことと、人々はもう薪を焚く必要がなくなりましたが、パイワン族はこの習慣を守るよう努力しています。一部の集落では、薪の代わりに、プロパンガスを贈ることにしたそうです。
3.魯凱族(ルカイ族):ブランコ
ルカイ族は、主に中央山脈の南側、台湾最南端の屏東県と、台湾の南東部、台東県で暮らしている部族です。厳格な階級制度のある貴族社会で、男性優位社会です。パイワン族と住居地も部族の仕組みもかなり似ていますから、昔はパイワン族の一部だと間違われていたそうです。
ルカイ族の若者は、ブランコを使って思いを伝えていることで知られています。
毎年の7月頃、収穫祭が行われる前に、ルカイ族の青年たちは山に向かい、巨大な竹を切り倒してきます。それを材料にして、収穫祭のときには、高さ18メートルのブランコを作ります。このブランコは、未婚女性しか乗ることが出来ません。
収穫祭が開幕した後、きれいな民族衣装を纏い、アクセサリーを身に着けた女性たちは、順番にブランコに乗ります。
ブランコとは言うものの、公園にあるような座れるブランコではありません。実はあくまで長いロープの先に、足場があるようなものです。女性はその足場に踏んでから、膝をロープに固く縛り付けます。ブランコの下では、2人のルカイ族の男子がロープを引っ張り、ブランコを高く飛ばせます。
女性はブランコに乗っている間、その美しい姿を部族の人々に見せます。ブランコから降りるとき、女性は自分の恥ずかしさと初々しさを表すため、両手で顔を隠します。女性の恋人、あるいは彼女に気のある人は女性をキャッチし、そのまま女性を抱きかかえ、お祭りの休憩エリアに連れて戻します。女性を抱きかかえるとき、男性は必ず手をグーにしなければいけません。これは、女性の体をむやみに触らないという女性に対する尊重を表すためです。
このブランコの儀式を通して、恋人のいる人は、恋愛関係にあることを公表、恋人のいない人は、これから恋愛することをアピールできます。儀式を傍観する独身の男性たちも、ブランコに乗っている女性の中に、気になる相手はいるかと目を見開いてよく見ます。もし気になる相手がいれば、儀式の後にはすぐにその女性の家族に縁談を持ち込むからです。
ちなみに、もし女性の家族が、女性にはまだ恋愛が早いと思っていれば、女性をブランコから降ろされる役目が、女性の兄か、父親が担当しますよ。
(編集:曽輿婷/王淑卿)