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台湾ミニ百科(2021-12-15)現実世界にも魔法が?原住民族の「魔法使い」

  • 15 December, 2021
台湾ミニ百科
パイワン族のシャーマンが儀式を行っている。(写真:屏東県、CNA)

イギリスの大人気なファンタジー小説シリーズ『ハリー・ポッター』の第一巻、『ハリー・ポッターと賢者の石』の同名映画は今年、公開されて20周年を迎えることを記念し、今年12月3日から台湾の映画館で再上映されています。このことを受けて、最近私の知り合いの間では、ハリー・ポッターブームが再燃しています。

「もしもハリー・ポッターのように魔法が使えたら」と、おそらくこれは、子供だけではなく、ハリー・ポッターシリーズを見たことのある人ならば、誰もが一度は想像したことのあることではないでしょうか。

私達の知っている限り、魔法は存在していないはずですが、実は台湾の多くの先住民族、原住民族にも、魔法のような、独特な力が使える人がいます。

彼らのことを、部族によっては違う呼び方がありますが、標準中国語では、決まって「巫師」または「女巫」と呼んでいます。英語ではウィザードやウィッチ、つまり魔法師や魔女と翻訳することもできますが、台湾の場合は、「シャーマン」と翻訳したほうがより正しいでしょう。

このような人達は、概ね神様や死者の魂と接触したり、交渉したりすることができます。その能力を活かして、占いや病気の治療、予言などもできます。部族の重大な式典の時は、ご意見番や祈祷師として、儀式の要のような役割を果たします。そのため、部族の人々から尊敬されており、部族の日常生活に欠かせない存在となっています。

1.パイワン族

パイワン族は、主に台湾を南北に貫く山脈、中央山脈の南側で暮らし、貴族社会で、部族の長が世襲であることで知られています。

パイワン族のシャーマンはみんな女性、puringau(プリンガウ)またはmarada(マラダ)と呼ばれています。パイワン族のシャーマンは「唱經(Marada)」という、お経を唱える儀式を通じて、神様や先祖の霊を自分の身に憑依させます。「唱經」は、歌唱力の唱とお経と書きます。神様のお告げはシャーマンの口から、歌という形で部族の人々に伝えます。

儀式を行う時、シャーマンは桑の葉っぱの束を手に持って、それをあおぎながらお経を唱えます。桑の葉っぱの間には、細長く切られた豚肉のスティックが挟まれます。シャーマンの目の前にも、供え物として、まる一匹の豚と、豚の骨を載せた桑の葉っぱがいくつか並べられます。儀式の最中には、その豚をさばきます。それから、豚から切り分けられた肉のうち、最もよい部位とされている、豚の体の右上の部分の肉を並べて、神様に献上し、神様の祝福と御加護を祈ります。

お経を唱えている時、パイワン族のシャーマンは神様に取り憑かれていますから、その間にどんな行動をとったのか、本人ですらもわからないということです。また、お経の内容は、一応ちゃんとした文面があります。その内容をすべて頭に叩き込むことは、シャーマンを目指す女性たちにとって、基本中の基本です。儀式によって、時にはお経を1、2時間以上唱え続ける必要がありますが、そのお経の内容について聞いてみましたら、やはり答えは「唱えているのは私ではなく、神様なのだ」ということですよ。

2.プユマ族

プユマ族は、中央山脈の東側に分布している原住民族の一つです。主に台湾南東部の台東県で暮らしています。プユマ族は、厳しい年齢階級制度が存在している、女性中心社会です。それから、現在台湾の政府が承認している、16部族の原住民族のうちでも、特にシャーマンの魔力が強いことで知られています。

プユマ族のシャーマンは「termamaw(テルママオ)」または「pulingaw(プリンガウ)」と呼ばれています。男性も女性もいます。部族では、病気の治療、夢占い、人探し、さらに、落ち込んでいる人の相談役まで担っています。日常茶飯事から祭り事まで、すべてシャーマンと関係していると言えます。そんなシャーマンは、部族では重要不可欠で、崇高な地位があります。

プユマ族のシャーマンは、それぞれの集落の特性と需要によって、その能力は「白巫術」、「黒巫術」、つまり白魔法と黒魔法の2種類あり、使う道具も違います。

白魔法は病気の治療と幸福を祈願する力があると信じられています。一方、黒魔法は、他の集落や部族の侵入を防ぐよう、人を呪うための魔法です。この魔法をかけるとき、シャーマンはまず悪霊を招き、自分の体に取り憑かせます。それから、悪霊はシャーマンの体を借りて魔力をかけて、集落を守る儀式を執り行います。

もし魔法をかけたのは魔力の強いシャーマンでしたら、一度かかってしまったら、なかなか解くことができません。ですから、プユマ族の集落に行ったら、勝手にそこのものを触ってはいけない、というのははるか昔から、台湾の原住民族の間で広く伝えられている共同認識です。

あるパイワン族の長老の話しによりますと、昔、あるパイワン族人は、プユマ族の村に遊びに行ったとき、床に置いてあった植物の実「ビンロウ」をうっかり拾いました。その人は帰宅の途中、いきなり発狂し、しまいには原因不明の病気で急死してしたそうです。これはプユマ族の黒魔法による恐ろしい影響かもしれません。それによりパイワン族を始め、ほかの原住民族がプユマ族のシャーマンに対する畏怖の念が更に強まったということです。

時代が進むにつれて、原住民族は、人口の9割以上占めている漢民族の影響を受け、自らの伝統文化を失っていることが見られています。プユマ族の黒魔法も、近年、他の部族と争ったり、敵対したりすることが殆どなくなりましたので、その伝承が失いかけています。プユマ族は近年、新生代のシャーマンの育成に力を入れて、シャーマン文化を守るよう努力しています。

(編集:曽輿婷/王淑卿)

 

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