:::

台湾ソフトパワー - 2022-09-13_ヤングシェフ賞に選ばれた蔡元善(Johnny)シェフと古俊基(Kei)シェフ

  • 13 September, 2022
台湾ソフトパワー
(写真:蔡元善シェフ(左)、古俊基シェフ(右)/ミシュランガイドフェイスブックページより/2021年)

先月、8月30日に、2022年の「台湾版ミシュランガイド」の星付きレストランが発表され話題となりました。星を獲得したレストランは早速どこも予約が取れないほど人気となっているようですが、ミシュランガイドでは星付きレストラン、そして“手ごろな価格で良質な食事ができるお店”、「ビブグルマン」だけではなく、2021年版から登場した“持続可能なガストロノミー(美食学)”に対して、積極的に活動しているレストランにスポットを当てた「ミシュラングリーンスター」や、ミシュラン特別賞が選ばれています。

その「ミシュラン特別賞」のうち、先週のこのコーナーでは今年新設された“スターソムリエ”に選ばれた林允順さんをご紹介しましたが、今週は、“年輕主廚大獎(ヤングシェフアワード)”を受賞した二人のシェフをご紹介しましょう。

この“年輕主廚大獎(ヤングシェフアワード)”は、才能あふれる若きプロフェッショナルに送る賞で、台湾版は2020年から登場しています。

第1回の2020年は、台中の焼き肉レストラン「俺たちの肉屋」のシェフでオーナーの鍾佳憲(Sam)さんが、昨年の第2回は、台中のフレンチモダンレストラン「澀Sur」が一つ星を獲得し、同時に林佾華シェフも“ヤングシェフ賞”を獲得しました。

そして、今回、この“ヤングシェフ賞”に輝いたのは、一つ星レストラン「T+T」の、蔡元善(Johnny)シェフと、香港籍の古俊基(Kei)シェフの2人が同時に獲得しました。

レストラン「T+T」は、蔡元善(Johnny)シェフが2018年に立ち上げたお店で、「ビストロの精巧さと親しみやすさを持ちながら、ファインダイニングの厳選した素材と料理水準を併せ持つお店」を目指し、そして台湾独特の地理的要因や多元文化の特性から、アジアの味と風土とを結びつけた創作メニューが並んでいます。

例えば、看板メニューの「松露|鴨肝|車輪餅(トリュフとフォアグラの回転焼き)」や、シェフ特製の「生蠔| 麵線|蒜泥(牡蠣と揚げたそうめんのガーリックピューレ)」、台湾の香りが引き立つ「牛舌|巧克力|水煎包(牛タンとチョコレートの焼き小籠包)」など、モダンフレンチにアジアのテイストを加えた独創的なメニュー。

「松露|鴨肝|車輪餅(トリュフとフォアグラの回転焼き)」だけみても、日本では手軽に楽しめるおやつである回転焼きが高級料理に!と驚きます。

そんな独創的な料理を生み出している蔡元善(Johnny)シェフは、現在35歳とまだ若いのですが、飲食業界での経歴はもう20年以上になるそうです。

小さい頃から料理に興味があったそうで、台湾唯一の飲食系専門学校である「開平餐飲學校(開平飲食学校)」で飲食に関する知覚を養ったり、人生経験を創作の養分に変えていくこと、趣味を仕事に発展させることなどを学びました。

専門学校を卒業後、いくつかのレストランで働きますが、その中で最も影響を受けたのは、シンガポール人の郭文秀(Justin Quek)シェフが開いた「Justins Signatures」で働いていたころだそうで、そこでフランス料理に対する味覚の記憶が芽生えたそうです。また、郭文秀(Justin Quek)シェフはよくシンガポール料理の要素を取り入れていたことから東南アジアの味にも多く触れたんだそうです。

その後、台湾の有名シェフ、江振誠(アンドレ・チャン)がシンガポールに開いていた二つ星レストラン「Restaurant Andre」で修業し、晶華酒店(リージェント台北)の鉄板焼きレストランなどで働いた後、2015年に「五味瓶(C’est la vie Bistro)」をオープン。そしてそのお店を閉店後、3年前に新たに「T+T」をオープンしました。

*****

そして今回、同時に“ヤングシェフ賞”を受賞した香港籍の古俊基(Kei)シェフは、今年4月に「T+T」に加入。

1986年生まれの古俊基(Kei)シェフは、学校を卒業後は今とは全く違う業種の仕事をしていたそうです。ところが「これは本当に自分が好きなことなのか?」と自問自答するようになり、悩んだ末、自分は食と料理に興味があるということに気が付いて、会社勤めをしながら、退勤後に日本の焼き鳥屋の厨房で見習いを始めます。

その時を振り返り、古俊基(Kei)シェフは、「見習いは疲れるね。特に日本のお店はもっと疲れる。でもとても楽しかった」と、身体は疲れていても心はとても幸せだったと語っています。

こうして飲食の世界に足を踏み入れた古俊基(Kei)シェフは、夢を抱き、料理学校へ通いはじめ、昼間は授業、学校の後はホテルで働き、2008年から料理人としての人生を歩み始めました。

2011年から2年間、オーストラリア・メルボルンのレストランで働いた後、香港に戻り、その後、ミシュラン二つ星レストラン「Amber」で最も長く働きました。

そんな古俊基(Kei)シェフが台北で働くようになったのはなぜかと言うと、古俊基(Kei)シェフは、ここ3年程、よく休みには台湾に来て食を楽しんでいたそうですが、その時に台北のファインダイニング市場の急速な成長に気付き、香港のファインダイニング市場は既に成熟し飽和状態だが、台北も競争が激化しているものの、市場はまだまだ成長し、挑戦とチャンスに満ち溢れていると考えたそうです。そして、数年前に友人から紹介され「T+T」で食事をした際に、食材の面白い組み合わせに魅了されたことがきっかけに。

また、「T+T」のオーナーの蔡元善(Johnny)シェフも、アジアの風味の元を探求する中で、更に深い所へ進んでいきたいと考えていたことから二人の思いが一致し、今年から蔡元善(Johnny)シェフと古俊基(Kei)シェフの二枚看板となっています。

今回、ミシュランガイドの“ヤングシェフ賞”に選ばれた二人。

二人のシェフの安定したキャラクターと斬新な料理や、最近、実施している「食驗室(PDR)」という料理プロジェクトによる、冒険的で実験的な料理精神が注目を集めています。

“ヤングシェフ賞”ですので、まだまだ若い二人、これからの活躍も楽しみです。

ちなみに、「T+T」というお店の名前は、「tapas tasting」という意味なんだそうですよ。

ビストロのような落ち着いた雰囲気の中で、アジアの要素を取り入れた、一つ一つがとても繊細な創作料理を提供してくれるお店として、ミシュランの星をとる前から予約が取れないお店として人気となっていたのですが、昨年、一つ星を獲得してからもっと予約が困難なお店となっていました。そして今回の“ヤングシェフ賞”獲得によって、さらにさらに予約が取れなくなりましたね。

でももし機会があれば、自身のルーツを大切にしつつ、食材にこだわり、新たな世界を作り上げる二人のシェフの独創的な料理をぜひ楽みに足を運んでみてくださいね。

Program Host

関連のメッセージ