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台湾ソフトパワー - 2022-08-02_初の衛星搭載ハイブリッドロケット打ち上げ成功!

  • 02 August, 2022
台湾ソフトパワー
台湾で初めてとなる衛星搭載ハイブリッドロケットの2段目の打ち上げ実験が成功した。(写真:國家太空中心提供/CNA)

先月、台湾で初めてとなる衛星搭載ハイブリッドロケットの2段目の打ち上げ実験が成功しました!

7月10日午前6時12分、台湾南部屏東の旭海で「HTTP-3A」の2段目の打ち上げが順調に行われ成功。

短期科研火箭發射場域(短期科学研究用観測ロケット発射場)が完成して以降、初の打ち上げで、現場には多くの宇宙ファンも駆け付けました。

このロケットは、国立陽明交通大学「先端ロケット研究センター(ARRC)」が手掛けるもので、チームの資料によりますと。2段目ロケットの大きさは4.8メートル、重量およそ365キログラム。

当初は、今年(2022年)の5月に実施予定でしたが、天候不良やシステムの異常によって延期されていました。

そして、今回も前日の9日に打ち上げられる予定でしたが、打ち上げ前の最終のチューブの切り離し段階で窒素分離ジョイントに異常が発生したために打ち上げを中止し、翌10日に再びチャレンジ。

7月10日の屏東県牡丹鄉旭海村の明け方の天気は快晴で、涼しい風が吹いていました。そして午前6時10分ごろ固定器から離され、6時12分、順調に打ち上げられ、現場は歓声に包まれました。

中には2日連続で見に訪れた人もいたそうです。

今回の元々の飛行プランは、発射後5秒間垂直に飛行した後、海方向に飛行し、60秒後にエンジンを停止、慣性を利用して飛び続け、90秒後にパラシュートが開き、ゆっくりと海に落ちるというもので、飛行時間は8分から10分間、飛行高度は最高12キロとしていました。

しかし、実際にはロケットは発射から1分後にはパラシュートを開き、その1分後には海に落下、実質飛行高度は3キロだったということです。

これについて、「先端ロケット研究センター(ARRC)」は、これは世界初の誘導型ハイブリッドロケットで、飛行時間は短く、飛行高度も高くなかったものの、ロケットは放物線飛行を続け、設計通りにパラシュートを開き、工程は予定通り進んでおり、ミッションは99%成功したと語っています。

なお、この「HTTP-3A」の2段目ロケットは、ロケットに重要な研究データを搭載しているため、落下後は漁船を出して回収し、その過程を詳細に把握して、今後の分析に役立てる予定とのことで、来年初旬には、1段目の打ち上げに挑戦して、空中離脱や点火の制御を検証する予定だそうです。

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台湾では近年、宇宙開発への機運が高まっていて、宇宙科学技術ナショナルチームを打ち出すため、近年、國研院太空中心(国家宇宙センター)が、ロケットの打ち上げ、設備の検証や開発能力、人材育成などの計画を立て、台湾の「宇宙への夢」が無限のビジネスチャンスを生み出すことを期待しています。

蔡英文・総統も昨年(2021年)9月に、台湾は間違いなく宇宙市場に参入できる力を持っている。今後10年、世界で数万個の低軌道衛星が打ち上げられる。この商機を捉え、半導体や精密機器製造といった、台湾の長期的な強みである部分を活かし、「宇宙科学技術における台湾ナショナルチーム」を構築する必要があると語っています。

「太空發展法(宇宙開発法)」が昨年(2021年)、国会での第三読会を通過し、宇宙産業は台湾の“6大核心戦略産業”の中の要となっています。第3期宇宙科学技術発展計画では10年間で251億台湾元(日本円およそ1,095億円)を投資する予定です。

科技部(先日、7/27に「國家科學及技術委員會」に改名)の吳政忠・部長は、今年の初旬に、2022年は台湾の宇宙開発元年であるとし、第三期計画を2030年まで延長し、衛星の総打ち上げ数を2倍以上にするとの見方を示していました。

人材育成の部分も重要な課題で、國研院太空中心(国家宇宙センター)は「太空學苑(宇宙アカデミー)」を設立するなど力を入れていることから、今回の学生たちが携わってきたロケットの打ち上げに、蔡・総統も自身のフェイスブックページで「10年間奮闘してきた陽明大学の学生エンジニアや大学院生が貴重な経験を積むことができた。これは台湾の宇宙人材を育成するうえで重要な取り組みであることは間違いない」とコメントし、陽明大学のチーム、そして関係機関への感謝を伝えていました。

将来の“宇宙ビジネス”のチャンスを見据え、台湾が今、得意分野を生かし、世界に打ち出すための準備を着々と進めている中、今回の打ち上げの成功と言う実績は、台湾における宇宙開発研究の一つのマイルストーンとなりました。

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