皆さんは、台湾の人たちが話す言葉といえば何語を思い浮かべますか?
以前、私が台湾に語学留学すると友人に伝えると、多くの人から「台湾語を勉強するの?」と聞かれました。
多くの人にとって、「台湾で話される言葉」なので「台湾語」というイメージかと思いますが、台湾で“国語”とされるのは、“標準中国語”のことです。
ただ、“台湾の人が話す言葉は台湾語”というのも間違いではなく、台湾で生活していると、台湾語で会話をしている人と出会ったり、会話の中でも中国語に台湾語が混ざっていたり、ニュースを見ていても台湾語が出てきたりと、いたるところで“台湾語”に触れることがあります。南部の方が台湾語を使用する人の割合が多いのですが、台北に住んでいても台湾語をよく耳にしますよ。
(私は最近、なぜかよく台湾語で道を聞かれ、全く聞き取れずに困ったりしています…。)
少し前の調査ですが、2020年に行政院が発表した、「2020人口及住宅普查結果(人口及び住宅統計調査結果)」によりますと、コミュニケーションをとる時、台湾の人々の66.37%が主に標準中国語を使用するとしていて、次いで31.73%の人が台湾語を使用しているそうです。
しかし、年齢が下がるほど台湾語の使用率が下がっていって、65歳以上は主に台湾語を利用するという人が65.9%と半数以上いるのに対して、10代の若者はわずか1割にしか満たないという結果でした。
また、教育部が行った別の「台灣本土語言調查報告(台湾本土言語調査報告)」の調査結果によると、台湾語を含む本土の言語は世代間の伝承危機に直面していて、中でも、1986年から1994年の間に生まれた人のうち、台湾語を話す人の割合は22.3%に減少しているそうです。
しかし、台湾では2001年から小学校の義務教育課程に母語が導入されていたり、メディアを利用するなどして、若い世代にも台湾語と接する機会を増やすような取り組みを続けています。
また、教育部では海外にも積極的に働きかけていて、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)アジア太平洋センターでは2020年から「台湾言語と文化」という台湾語の講座を開講しています。
UCLAでは、2014年から「台湾研究講座」を始めていて、台湾から学者や客員教授を招いた講座や、公開講座を行なうなど、学生や教員への台湾文化への理解を深めていました。そこからさらに、2020年1月に「台湾言語と文化」講座を開講。台湾語を中心とした教材を使い、台湾のポップミュージックや、台湾オペラと呼ばれる「歌仔戲(ゴアヒ)」、台湾の伝統的な人形劇「布袋戲(ポテヒ)」、メディアやドキュメンタリーを通して、学生たちに台湾語と台湾文化への理解を深めてもらい、台湾の台湾語と、東南アジアの華僑が話す閩南語を比較するという内容です。
この「台湾言語と文化」の講座は、開講するとすぐに埋まり、これまでに2年間で既に100人以上の学生が履修しているそうです。
このような取り組みをすることによって、台湾語が広く知られ、次世代への継承にもつながるのかもしれませんね。
一般に、文化と言語は共にあると言われているので、言語の消失は文化の消失にもつながるとして危惧されています。
台湾語も台湾の文化を次の世代に継承するために、消失させてはならないとして、今、様々な取り組みが行われています。
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ちなみに、台湾の本土語は「台湾語」だけではなく、台湾第2のエスニックグループ、客家の人たちが話す「客家語」、そして台湾原住民族の人たちが話すそれぞれの「原住民族語」があって、どれも次世代への伝承の危機に直面しています。
しかし、今、台湾では、それらの本土語を守っていこうと、政府も様々な取り組みを行っていますし、台湾の人達もそれぞれのルーツを振り返り、自身のアイデンティティを改めて大切にする人も増えてきているような気がします。
台湾の“国語”と呼ばれる言語は「標準中国語」ですが、台湾には文化と共に言語にも多様性があり、それを広め、触れる機会を増やすことで、本土語の“火”を消さないよう、文化を消さないよう、次世代へ伝承しようとしています。