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馬場克樹の「とっても台湾」-2023-1-22_台湾の年越し料理「年菜」

  • 22 January, 2023
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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」)

<第1セクション【台湾は本日が旧正月の元日「初一」】>

  • リスナーの皆様、「新年快樂!」「恭喜發財!」、旧正月明けましておめでとうございます。台湾では本日が旧正月の元日「初一」。年越しの瞬間には街中で爆竹の音が鳴り響く。日本では新暦の元旦から干支が変わるが、台湾では昨日までが寅年で旧暦の元日の本日から卯年がスタート。
  • 旧正月の数日前ともなると、台湾では民族大移動が始まる。台北、新北の北部の大都市圏から、南部の嘉義、台南、高雄、屏東、東部の花蓮、台東に向かう公共交通機関のチケットは故郷で旧正月を迎えようとする人々の間で争奪戦となる。それぞれの故郷にたどり着くと、旧暦の大晦日「除夕夜」「大年夜」は、三世代、ときには四世代に跨る家族が一堂に会して食卓を囲み、「年菜」と呼ばれる年越し料理をいただく。「年菜」は「年夜飯」あるいは「圍爐」とも言われる。縁起の良いものを家族団欒の中でいただくので、日本の「御節料理」に例えられる。家族で食卓を囲むタイミングが大晦日か、年を越してからの正月かという違いはある。
  • 台湾の「年菜」では、縁起を担いで使われる食材や調理法にこだわるのも、日本の「御節」に似ている。例えば、「鶏」。これは「鶏」と大吉の「吉」の華語の音がともに「チー」であることから、特に縁起が良いとされる。また台湾語で「鶏」は「ケェ」と読み、「家」と同じ発音になる。このため、鶏肉を食べることは「起家」=「家運隆昌」に繋がると考えられている。伝統的な風習では丸鶏の方がより好まれ、頭から尻尾まで使うことで「一家団欒」「美滿幸福」を表す。
  • 蕭煌奇(Ricky Hsiao)さんの台湾語の歌で『圍爐』をOA。

 

<第2セクション【時代とともに移ろいゆく風物詩、台湾人の「お金の活かし方」】>

  • もう一つの主役級の食材が一匹丸ごとの魚。これは「毎年毎年お金や暮らしに余裕が出て裕福になる」という成語の「年年有余」の「余」という字が「魚」の発音「ユィ」と同じことに由来。台湾では「白鯧魚」と呼ばれるマナガツオが特に好まれる。これはマナガツオの形が丸みを帯びており、銀色に光っていることから、お金を連想させるため。普段は1斤(600グラム)数百元で市場に売られているマナガツオが、旧正月前は1千元を遥かに超えることも。魚は大晦日に全部食べてはいけない。必ず少し残して新年になってからいただくのがしきたり。これも財を残すことに繋がる。
  • そして、「蹄膀」と呼ばれる豚足の煮込み。これは「富貴發財」「金榜題名」を表す。続いて「丸子」、肉団子。外見がまん丸なことから、「団円」を表します。「豆腐」も「腐」の字が「富」と同音の「フー」であることから、富貴を意味する。このほか形が古代の通貨「元宝」に似ていることから「餃子」、日本の年越し蕎麦のように長寿を祈願して長い麺の「長寿麺」なども華人社会ではよく食べられる。
  • この他、台湾特有のものとしては、台湾語の同音異義語に由来するものがある。例えば大根は「菜頭」と言うが、これは良いスタートを切るという意味の「好彩頭」に通じる。パイナップルは「旺萊」と言うが、これは商売の千客万来や運気の向上を意味する「旺來」に通じる。また、台湾でよく食べられる野菜で台湾式の「酸菜」の原料にもなる「刈菜」は、「長年菜」とも言われ、長寿を祈願して食べる。
  • それから豚の骨付バラ肉、アヒル肉、ウズラの卵、イカやアワビやときにはフカヒレなどの海鮮、ナツメやタロイモなどの様々な具材を甕の中に入れて蒸し煮にする福建料理の「佛跳牆」(通称「ぶっ飛びスープ」)も「年菜」に加わることの多い料理。普段はなかなか食べられない、手が込んで高価な料理を、大晦日のこの時とばかりに一家団欒の中でいただく。そういった意味で「火鍋」で食卓を囲む家庭も最近は多い。
  • 今回、「年菜」をキーワードに検索エンジンを掛けたところ、ページをめくれどもめくれども、ホテルやレストランや食品会社の「年菜」のデリバリーサービスの広告ばかり。この数十年、台湾でも核家族化が進み、お婆ちゃんやお袋の味というのは、だんだんと受け継がれなくなって来ているのと、昔と違って外食文化が充実し、年に一度の豪勢な食事を家庭で「年菜」をいただきながらという風習も弱まって来ているのだろうと感じる。大晦日にホテルのレストランで「年菜」の食事を済ませたり、デリバリーの「年菜」が活躍したりするところは、日本の「御節料理」の状況とも似たり寄ったり。
  • タイから海を渡り、2000年代初期に台湾で一斉を風靡した女性デュオ、中國娃娃(China Dolles)の歌で『發財發福中國年』をOA。

 

<第3セクション【御節と年菜に見る日台の食文化の違い】>

  • 台湾の「年菜」は大晦日に、日本の「御節料理」は年が明けて正月にいただくものと話をした。華人社會では「好的結束」、つまり「圓滿に終わること」を重視し、一年の一番最後の日に一家団欒で「年菜」で食卓を囲み、これに対して日本では「好的開始 」、つまり「良い始まり」を重視し、一年の初めの日、元日に「御節料理」をいただくのではないか。
  • 台湾では円卓でお皿も丸い。そして料理は暖かい。一方、日本では重箱もそうだが、お皿も四角いことが多く、御節料理やお弁当も冷たいのが普通。お碗やお箸もお父さん用、お母さん用、自分用と分かれていて、同じセットの食器でも少しずつ模様や色が違い、個別化していることも多い。ところが、台湾では食器は全く同じ模様、色のもので統一されているので、誰がどのお碗を使おうが箸を使おうが関係ない。こんなところにも文化の違いが現れるのは面白い。
  • 旧正月が過ぎると、台湾では少しずつ寒さが緩んでくると言われる。まさにこれからは三寒四温。今月の歌で雪の下の大地に息づく命の鼓動を歌った『この命のぬくもり』(馬場克樹)をOA。

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