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馬場克樹の「とっても台湾」-2023-1-15_「辦年貨」ーー台湾の歳末旧正月用品大売出し

  • 15 January, 2023
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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」)

<第1セクション【大稻埕は迪化街の「辦年貨」】>

  • 旧正月をメインで祝う台湾では、今がいよいよ本格的な年末。今年の旧正月の元日「初一」は、1月22日。多くの会社では「年終奨金」と呼ばれる年末のボーナスも支給される時期。年末といえば、各地で「辦年貨」と呼ばれる台湾の歳末旧正月用品大売出しが、この時期だけ出現する。その最大のものが、台北の大稻埕は迪化街の「辦年貨」だ。台北の大稻埕は、清末から日本統治時代にかけて、茶、布、漢方薬、乾物類の取引で、淡水河沿いの迪化街を中心に早くから栄えた街。老舗の乾物屋や漢方薬店に混じり、近年はお洒落なデザイナー系のショップやカフェも軒を並べるようになり、国内外の観光客も惹き付ける街へと変貌を遂げつつある。
  • その迪化街は、旧正月を目前に控えた二週間ほどの間だけ、一年に一度の歩行者天国となる。道路の両側には正月用品を売る露店が所狭しと並び、買い物客でごった返す。この歳末商戦は台湾では「辦年貨」と呼ばれていて、この時期台湾各地の伝統市場に出現する。ふだんは落ち着いた街並も、この時ばかりは、さながら年末の上野のアメ横のような様相を呈する。店先を間借りした露店で売られているのは、落花生、ピスタチオナッツ、スイカやヒマワリの種、台湾式ビーフジャーキーやポークジャーキー、サキイカ、カラスミなどの乾物類、飴やスナックなどの駄菓子類で、お茶請けや酒の肴として旧正月の家族の団らんのお供として活躍する。これらの品々は基本的にすべて試食できる。この2年間は新型コロナの影響で試食を控える向きもあった。呼び込みの店員が客に試食を促してくれることもあるが、露店に並んだ商品を特に店員に断るでも無く、客が勝手に一つ、二つだけ摘んで行く場合もある。(01:00~12:00)
  • 台湾では旧正月が近付くと必ず街のあちこちで流れる『恭喜恭喜』を卓依婷さんのバージョンでOA。

 

<第2セクション【時代とともに移ろいゆく風物詩、台湾人の「お金の活かし方」】>

  • 昔の「辦年貨」では、個人経営の規模が小さな露店ばかりで、それぞれが独自の手作り感あふれるお菓子や飴玉を売っていた。時代が移り、昔ながらの駄菓子だけではなく、最近では野菜チップスやドイツ風の豚足まで売られるようになり、商品も変化した。そして、チェーン店を展開しているような比較的規模の大きな企業が多く出店していることに気付く。台湾の昔の辦年貨がどんなふうであったのか、私は話を聞いて想像するしかない。現在では、伝統市場だけではなく、大型量販店やスーパーマーケット、コンビニエンスストアでも辦年貨の活動が行なわれるようになった。寒波の影響で天候が悪かった年には、24時間営業の大型量販店に客足が流れ、迪化街の辦年貨は大きな打撃を受けたと聞く。そして、この2年間は新型コロナだ。露天商の方たちも本当に大変だったと思う。
  • 台湾も含めて、華人文化、特に南方の地域では、現世でお金を儲けることを積極的に奨励し、それが善であるという考え方が広く普及しているように思う。武神でもあるが財神でもある「関公」、すなわち三国志の蜀の英雄、関羽は台湾では「関帝廟」に祀られ、広く信仰されている。そして、台湾の人々は「お金の活かし方」、についても、よく理解している。社会的弱者に対する支援は様々な背景を持つ団体や個人が幅広く行なっている。企業然り、宗教団体然り、NPO法人然り・・・。例えば、東日本大震災の直後に200億円を超える義援金が台湾から寄せられたのも、この「お金の活かし方」を知っているからこそ、成し得たことだと、台湾在住40年の作家、木下諄一さんが論考していた。
  • 台湾では新年の挨拶は「新年快楽(明けましておめでとうございます)」が一般的だが、もう一つ大事な挨拶がある。それは「恭喜發財(お金が儲かりますように)」だ。そして「發」の「八」に繋がることから、「八」はとても縁起の良い数字になる。日本では「末広がり」ということで「八」は好まれるので、日台どちらでも縁起が良い数だ。
  • 香港の「四大天王」の1人、劉徳華(アンディ・ラウ)さんの歌で『恭喜發財』をOA。

 

<第3セクション【それでも台湾独特の風物詩】>

  • かつてのように、旧正月に空いている店も無く、商品の数も量も限られ、物流も発展していなかった時代は、辦年貨は一年一度の本当に重要なイベントだったはずで、人々の旧正月を待ちわびるワクワク感も相当なものであったことだろう。伝統的な風物詩が時代とともに変遷し、その意義が薄れていくのは、ある意味では仕方の無いことだが、一抹の寂しさを禁じ得ないのもまた多くの人々の本心ではなかろうか。
  • 時代とともに変わっていく部分があるにしても、辦年貨が年に一度の台湾独自の風物詩であることに変わりはない。迪化街の辦年貨、チャンスがあれば、この時期に台湾に来られる日本の方も足を運んでみてほしい。
  • 今月の歌『この命のぬくもり』OA。

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