<第1セクション【台湾の12月の風物詩】>
- 今年も“年の瀬”。台湾の12月には様々な行事があるが、クリスマスを祝う人は多い。ただ、日本のクリスマスとは少々様子が違う。フライドチキンのチェーン店や街のケーキ屋の前の行列は見られない。台湾ではクリスマスの前後に、家族や同僚、友人たちと集まって食事をしたり、プレゼント交換をしたりして楽しむ人が多い印象。日本ではクリスマスイブは、恋人たちが一斉に高級レストランやホテルを予約するが、台湾では、恋人たちにとって大事なのは、年に2回の「情人節」バレンタインデー。
- 11月から12月にかけて、台北駅の北西側の太原街にはこの時期にだけ、クリスマスの飾り付けを販売する専門の屋台が登場。ここの屋台は2か月間で1年分の商売をするので、売り子の掛け声にも力が入る。台湾語版『ジングルベル』をOA。
- 今年の冬至は12月22日。台湾では冬至に「湯圓」(もち米粉の団子)を食べる習慣がある。冬至に湯圓が食べられるのは、冬至が過ぎると少しずつ昼が長くなり、「陽気」が徐々に回復するため、人々はこの日に「一家団欒」と「万事円満」を象徴する湯圓を食べるようになった。
- 中国の周から漢代の初めには、「冬至」が「年度」の始まりで、この日に「添歳」(一年の始まりを祝う儀式)を行っていた。後年、詩人の陸游が「吃盡冬至飯便添一歲(冬至の食事で1歳としをとる)」と表現をしたことから、「冬至大如年(冬至は正月の如し)」という諺が生まれた。ここから「湯圓を1つ食べると1つ歳をとる」という話も生まれた。冬至を祝う童謡《冬節圓》をOA。
<第2セクション【台湾北部の「毛毛雨」と「湿冷」】>
- 私は様々なメディアの取材を受けてきたが、「台湾で長く暮らす中で、どうしても慣れないことはあるか?」との質問をよく受ける。私は決まってこう答えている。「台湾北部の冬の気候」。台北を始め、台湾の北部では、12月~1月にかけて「毛毛雨」と呼ばれる小糠雨が降り続く日々となる。気温は10度前後、時には一桁にまで下がることもある。数年前には海抜の高い山間部だけではなく、台北にも雪が舞った。しかも、暖房設備が整っていない家庭、オフィス、ホテル、交通機関も多く、南国で亜熱帯とは言え、実は結構寒い。
- 湿度が高く寒いことを「湿冷」という。この寒さが実に身体に堪える。膝から寒さがジワジワと浸透するような感覚。東北生まれで、北海道でも暮らしたことがある私が、台北の冬の方がむしろ寒いと感じる。
- こんな日は温泉が恋しくなる。北投温泉と同じ泉源を持つ「紗帽山温泉」という温泉がある。紗帽山の麓のこの温泉は、白濁した「白硫黄泉」と酸性泉の「青硫黄泉」がある。陽明山に向かう一本道の「行義路」沿いにあることから、「紗帽山温泉」は「行義路温泉」と呼ばれる。この温泉の施設の特徴は、宿泊施設を伴うホテルや旅館が無いこと。その代わり、日帰りの入浴客を対象としたレストラン付きの温泉施設が軒を並べている。以前は「眠らない温泉」の異名もあった。裸で入れる男女別の露天の大浴場を備えた施設が複数あることも嬉しい。「燒尾宴」と呼ばれる、その語源は唐代まで遡ることができる一種の満漢全席の料理を売りにしている施設も多い。
- 苗栗の泰安温泉の主題歌で今月の歌《泰安情歌》を八得力のライブ音源でOA。
<第3セクション【12月台湾の会計年度の年度末、そして「尾牙」】>
- 台湾の会計年度は1月から12月まで。今が年度末。各企業も公務員も財務・会計担当者は、今がまさに掻き入れどき。来年度の事業計画もほぼ固まり、新年度に備える時期。また、来年の旧正月の元日は、新暦の1月22日と例年より早く、今年は12月の半ばを過ぎると、各企業や団体で「尾牙」と呼ばれる忘年会が早くもスタートする。「尾牙」は旧暦12月16日に行われる最後の「做牙」(土地の守り神への参拝)のこと。これが転じて、年末のこの時期に行われる忘年会のことも「尾牙」と呼ばれるように。この時期は私のようなミュージシャンにとってもステージに呼ばれて演奏する機会も多い。
- 齊秦の1987年のヒット曲で『大約在冬季(だいたい冬頃)』をOA。