今日ご紹介するキーワードは「摸魚(mo1yu2)」。
先日、朝ご飯屋さんの奥さんと話をしていて、最近、新型コロナの影響で、自宅で仕事をする機会が増えたけれど、家だとはかどらなくて…という話題になった時に、「摸魚」と言われました。
この「摸魚」という言葉には2つの意味があって、1つは文字通り、「魚を捕まえる」という意味です。そして、今回、私が言われた方の意味は「真面目に取り組まない」、「油を売る」、「さぼる」というような意味なんです。
でもなぜ、「魚を捕まえる」が、「油を売る」、「さぼる」というような意味として使われるようになったんでしょうか。
これは、中国の魏晋南北朝時代の戦の際の兵の用い方を説いた書物である「兵法三十六計」の第20計「混水摸魚」から来ているそうです。
この第20計「混水摸魚」に書かれている内容は、池の水が泥で濁ったのに乗じて中から混乱した魚を捕まえるというように、敵陣の内部が混乱や動揺など不安定な際、混沌を利用して自身の利益を得るということを表しています。
職場において、仕事もしくは責任を回避する人は、他の人が見ていないときを利用して、池の水を濁らせ(=混乱させ)、そして両手を延ばして魚を捕る(=一見仕事をしている)ように装って、魚を捕まえない(=仕事を完成させない)。
つまり、他の人から見るととても真面目に働いているように見えますが、実は“摸魚(魚を捕っている)”ように装って、退勤時間が来るのを待っている…ということから、このような人を「摸魚」と呼ぶようになったんだそうです。
つい先日も、台湾南部・高雄の消防局員が業務時間中にオフィスのパソコンでドラマを見ながら仕事をしていたとして、罰則が科せられたというニュースがありました。その記事の書き出しは「公務員が業務時間中に“摸魚(さぼっている)”」と書いてありました。
魚を捕まえるのと関係なさそうな記事で「摸魚」という言葉を見かけたら、この「さぼる」、「油を売る」という意味があるということを思い出してみてくださいね。