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ナルワンアワー(月曜日) - 2022-06-06_鳥居信平・技師が完成させた地下ダム、「二峰圳」100周年記念イベント開催

  • 06 June, 2022
ナルワンアワー(月曜日)
鳥居信平が台湾最南端の街・屏東に完成させた地下ダム「二峰圳」。今年完成から100周年となる。(写真:CNA)

およそ100年前の日本統治時代、台湾では各方面でインフラ整備に力がそそがれました。

中でも、台湾南部に烏山頭ダムを建設し“嘉南大圳”という大規模な灌漑設備を整備した八田與一・技師が有名ですが、鳥居信平という技師の名前を聞いたことはありますでしょうか。

台湾最南端の街・屏東にある地下ダム、「二峰圳」を完成させた人物です。

日本統治時代、屏東は多くの日本人が生活をしていたそうです。その時代に、サトウキビの農地開墾のため、台湾製糖に招かれ、屏東の枯れた土地を、伏流水を利用した地下ダムによって潤したのがこの鳥居信平・技師です。

当時の屏東平野は雨季には林辺渓という川の氾濫に悩まされるにも関わらず、乾季には飲み水にも事欠くなど、水利の劣悪な場所で、しかも地面は大小の石に覆われて、土は堅く締まり、開墾にも大きな困難がともなう土地…と、開拓するには水の確保が不可欠でした。そのため、地下ダム「二峰圳」が作られることとなりました。

ちなみに、この地下ダムは、台湾製糖の社長であった山本悌二郎の雅号であった「二峰」にちなんで命名されたそうです。

1922年に完成した「二峰圳」は、完工以来取水が中断されたことはなく、長きに渡って屏東平野を潤し続けています。

屏東県の潘孟安・県長は、「二峰圳」は灌漑用水であるだけでなく、歴史、文化、産業・経済など様々な意義を持っている」とし、屏東は過去に“砂糖の都”と呼ばれ、屏東平野には広大なサトウキビ畑が広がっていた。当時、鳥居信平・技師は、伏流水を使用した画期的な方法のダムをつくり、それによって、屏東の産業や歴史、人文がはぐくまれてきた。近年は、「地下ダム」や「伏流水」工事の模範となっていて、水資源の持続的な発展を可能にし、台湾の偉大な水利プロジェクトの一つとなっていると説明しました。

また、文化処の吳明榮・処長は、二峰圳は、農業灌漑と生活用水に大きく貢献し、人と自然の共生のモデルとなっており、2008年には屏東県の「文化資産保存法」に基づく文化景観に登録し、その歴史的意義と重要性を示していると語りました。

その二峰圳が今年(2022年)、完成から100年となります。

そこで、屏東県は、今月6月、鳥居信平・技師の孫である、東京大学名誉教授の鳥居徹・氏を招き、日本と台湾の友好の一翼を担ってきた二峰圳の100周年記念イベントを開催するとのことです。

記念イベントは、6月10日から開催。台湾製糖が萬隆農場に唯一残した建物、「鳥居信平の事務所」で特別展が行われ、100年前の糖業の隆盛と、二峰圳を建設した鳥居信平についての紹介や、二峰圳についての紹介と共に、文化処は、二峰圳と鳥居信平の物語を記録した絵本を出版するほか、演奏会を組みあわせたディナーパーティで海外からの来賓と台湾の学者たちの交流を行ったり、鳥居信平・技師の孫の鳥居徹・東京大学名誉教授だけでなく、「水の奇跡を呼んだ男 日本初の環境型ダムを台湾につくった鳥居信平」の作者、平野久美子さん、そしてオランダやアメリカなどから国際的な水利専門家らを招いての「二峰圳百週年國際研討會(国際シンポジウム)」が行われます。

また、6月11日から7月3日までの毎週土日には、地元の人々を対象に、屏東県來義鄉の水源地の集水回廊から、二峰圳の美しさを実際に見てもらう文化景観ツアーを予定しているとのことです。

私も今回のニュースで鳥居信平・技師のことを知ったのですが、“嘉南大圳の父”と呼ばれる、八田與一・技師だけでなく、屏東の人々に今も愛され、感謝されている鳥居信平という技師がいたことももっと知っておきたいですね。

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